岡野雅海 著
徳川家康。 あの大英雄の死因は甘ダイの天プラを食べすぎたから、なんていう本もありますが、自分が病気にかかった時は自前で薬を調合したという人が、マサカね。
白身で身のしまった甘ダイに比べ、やや軟らかい身が紅色の服を着たイトヨリダイ。 正しくは「ソコイトヨリ」となっているようです。 黒目の周りのアイシャドーがピンク、体色も紅がかかったピンク、体型はオデコの甘ダイと比べると数段美しい。 その昔、イトヨリを使った干物を甘ダイと称して日本へ輸出したところ、偽称と言うことで輸入禁止処分を受けた方があったそうです。
でもネー、
この程度のものを、”ウソ”と言うなら、日本の魚屋さんが呼んでいる魚名はかなりのもんですよ。
日本人社会での特徴は、何とかマグロ、何々ダイ - - が圧倒的に多く、民族の特性か ~ または魚屋の陰謀か ~ とも思える程、ウソの魚名がまかり通っています。 このイトヨリダイも型から見るとタイでは通りにくいですが、色が何とも鮮やかで、ついタイと呼びたくなるのでしょう。 ピンクに黄の縦縞がイトヨリ、ピンクが腹に近くなるとパールホワイトになるのがソコイトヨリ。 いずれもカニ蒲鉾の材料になるとか。 美しいわりに水族館で見かけないのが不思議です。
午後三時。 一本釣りの小舟が入港します。 ほとんどの舟が一人漁師用ですが、中には夫婦で乗っていることもあります。 うらやましいですね。 大海で夫婦仲良く魚を釣ったり、網を引いたり。 小舟にはイケス付きのものもあり、アジ、タイ、イサキなどに混じって、あのソコイトヨリは元気に揚がってきます。 揚がった魚の半数ほどがバケツの中で泳ぎ回っています。 「今日は少ネエケン」。 こんな感じのタイ語を話しながら、漁師のおっ母さんが買い手と交渉します。
親父の方は「釣ったら仕事はおしまい。 後は酒でも飲んで一休み」。
バンコクで女の尻ばかり追いかける兄ちゃん達に比べれば立派なもんだ。
イトヨリはお刺身でも食べられますが、塩焼き、一夜干しの方が美味しいようです。
タイの代表的リゾート地プーケット島。 釣り、ダイビング、ヨット。 海洋レジャーの代表として海外にも知れ渡っています。 島々の海岸の土産物屋には美しい貝が並んでいます。 パールホワイト、オレンジ、レッド、グリーン、日本ではお目にかからない貝たちが勢ぞろいしています。
この中に、角を生やした大型の白、黄まじりの貝が売られています。 日本の貝類図鑑ではサザエの仲間として分類され、和名「鬼サザエ」となっています。 在タイ日本料理店ではホラ貝という名称で15年前くらいから使われ、特にタイ人が好む、とのことです。 現在は捕獲禁止という話もありますが、時々市場に出るようで、ハッキリした事は分かりません。 実際に食べた人の話を聞くと、「あれはウマイ」と言っていました。
私も実物を手にとって図鑑と照合しましたが、和名「鬼サザエ」の名に恥じない、立派な、”鬼ぶり”でした。
生息地は、「外洋の波の当たる海域」とあり、汚れた淡水の流入(混入)する場所には住めないので、これも日本のサザエと同じで、清浄な海を好むきれいな貝といえ、食用(刺身)として立派な素材と申せましょう。 但し‘生きている’ことが絶対条件で、刺身(生食)の場合は日本料理店に限ります。
たとえ入手されたとしても、奥様方の手に負える代物ではありません、念のため。
●著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)●
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
| 第一回 シャム湾 |
第二回 鮪(まぐろ) |
第三回 鰹(かつお) |
第四回 ハモ |
| 第五回 スズキ |
第六回 タチウオ |
第七回 タカベ |
第八回 イサキ |
| 第九回 岩ガキ |
第十回 カマス |
第十一回 イワシ |
第十二回 アオリイカ |
| 第十三回 シイラ |
第十四回 ボラ |
第十五回 熊エビ |
第十六回 鯛 |
| 第十七回 鰆(サワラ) |
第十八回 鯖(サバ) |
第十九回 魚屋の生活 |
第二十回 ソコイトヨリ 鬼サザエ ![]() |
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