岡野雅海
「今、日本じゃあタチウオが高くてね。 一切れ千円で売っているところもあるそうだ」。
「何でそんな物が?」
「ブツが少なくて高値なんだ。 ここにあるかね」。 二ヶ月ほど前、大手水産会社の駐在員の方と夕食を一緒にした時に出た話題です。
タチウオ。銀色の平たい魚体。 黄色く光る二重丸の目。 長く伸びた口に鋭い歯が並び、友達付き合いは難しい顔つきの魚。
平たい魚体は身が良く“シマリ” 新鮮なものは刺身がウマイという板前さんがいます。“タチ刺し”。 余りピンとこない感じですが、実際に刺身用のタチウオがここTHAILANDの日本料理店でも並ぶことがあります。
「オッ、タチだ!」。
「ン、タチ? … ダップグンだ!」。
「タイ人は食べるかね?」。
「ンー、喰ったこと無いね」。
例の朝市での母ちゃんとのやりとりです。 チョット小振りなタチウオ(1mほど)が黄色い目を光らせて横たわっています。
「これいくらかね?」。
「ΧΧB」。 やはりタイ人が食べないとみえて値段が安い。
「日本人はこんなもん食うのかい?」。 多少軽蔑気味な感じで聞いてくる。
「でもなー、」。
「ΟΟBぐらいで売れるぞ」。
「チョットおばさん、ダップグン10本でいくら? … 高いねー。 マケロ、マケロ」。 実に現金な物で、商売になると思えばすぐ買いに出る。 売れないことは考えない、我良きパートナー。
タチウオは日中100m程の深みに群をなし、夜は海面近くまで浮上して小魚を追う、とものの本にありますが、この通りだとするとジャム湾のタチポイントは100m程の深みとなり、漁船は比較的楽に的を絞れることになります。 確かにタチウオを水揚げする漁船は大型船で、10日間程操業して帰って来るそうですが、鮮度はどうもいただけません。
サタヒップに揚がる鮮度の良いタチウオは一本釣りの小舟だそうです。 型も小さく、毎日釣れるわけでもないようで、日本料理店向けには安定性を欠く点が問題です。 “ボウズ覚悟”で釣りに出るのも一興か!? 日本で出来ない釣りです。
タチウオ料理は、洗ったとき手早く水気を切る事が最大のポイントとか。 水につけておくと、身が水っぽくなって食味が落ちます。 塩焼き・ホイル焼き・フライ・粕漬け・含ませ煮と、淡泊な白身を生かした料理が楽しめます。
日本では、一切れ千円(300バーツ)、タイでは一本80バーツ、是非お試しを。
何?
一本物じゃあ料理ができない?.....そりゃあ困ったね。
●著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)●
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
| 第一回 シャム湾 |
第二回 鮪 |
第三回 鰹 |
第四回 ハモ |
| 第五回 スズキ |
第六回 タチウオ |
第七回 タカベ |
第八回 イサキ |
| 第九回 岩ガキ |
第十回 カマス |
第十一回 イワシ |
第十二回 アオリイカ |
| 第十三回 シイラ |
第十四回 ボラ |
第十五回 熊エビ |
第十六回 鯛 |
| 第十七回 鰆(サワラ) |
第十八回 鯖(サバ) |
第十九回 魚屋の生活 |
第二十回 ソコイトヨリ 鬼サザエ ![]() |