タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第十七回 鰆(サワラ) (プラー・インシー)

町にジングルベルが流れクリスマスが近づくと、朝晩がメッキリ冷え込んで、これでタイランド? と思うほど快適な気候になります。
海上は穏やかな漁日和が続き、年越しの物入りに備え船の衆も一段と仕事に身が入ります。
この頃から銀青に光る一際大振りな魚体を持つ(さわら)が登場します。

・・・・・日本ですとこんな感じで良いのですが、タイランド、特別にこの頃から登場するわけでもなく、登場しっぱなし・・・・の感があって、どうも締らない。
6月に鰆の卵を売っている。
大体産卵前の荒食いが旬にほぼ等しいはずだが、冬まで生みっ放しなのか、根気の良いヤツだ。
人間にもいるね、こういう人。 太腹鰆。

イカ船。 沖へ出て2時間。 エサのイカ漁が続いている。 夜9時。 いよいよ鰆釣り開始。 各人思い思いの道具立てで糸を垂れる。

ハ リ: 軸長特大に孫針を付ける。
ハリス: ピアノ線の1本ハリス(ヨリ線では食い切られる)
重 り: 鉄筋棒のブッタ切り、100号程度。 鉛の重りが無いのよ、タイランドには。
道 糸: 手釣りの場合はナイロン30号以上。 
竿・リール釣りの場合・・・勝手にやって。   わたしゃあ手釣り一本。
エ サ: ヤリイカ特大1匹掛け。

底を2mほど切って当りを待つ。 タバコ吸いはここで一ぷく.........(-。-)y-o0O.....
となるがそりゃまずい。
底を切った瞬間に”ガツン”と来ることが良く有る。
5分ほど待ってやおらイップク、がよろしい。

鰆の当たり、強烈なんてもんじゃない。ガツと来たと思った時には道糸が真横になっている。 この道糸の走りを止めるためにも、30号以上が必要。 道糸が細いと確実に手が切れる。 5kgを越えたら、もう大騒ぎ。 一人であげられたらその人は一人前。
あんたは揚げられる?
私・・・ん。 船頭任せヨ。 バラシたらもったいないもの。

釣りあげた鰆はすぐに締め、血抜きをすると食味も格段によろしい。味噌漬けの鰆しか食べたことない人にはわかりません。 すぐに特大ビニール袋に入れ、空気をしっかり抜いて、氷タップリのクーラーBOXヘ収めれば完璧。

さて、お料理。 お刺身です。 これ以外で食べる人は田舎者。
何っ、鰆の刺身食べたことない? 不幸な人だ。 心からオクヤミ申し上げます。
食べ切れない時は塩をふって、一晩風通しの良いところで干し、冷凍。 これも美味しい。
どうやって食べるかって?
そりゃあ味噌漬けだね。  お正月に。

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
鮪(まぐろ)
第三回
鰹(かつお)
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
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更新日:2001年3月26日