タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第五回 黄金のスズキ (タイ語名:プラー・ガポンカオ)
    海魚[スズキ],海魚[スズキ]

夏の盛り、日本海側の各港の突堤では、電気ウキを使ったスズキ釣りの人々で賑わいます。
    突堤から海へ向かって光の筋が飛び、すぐにポッカリとウキの頭が揺れながら淡い光を海面に放ちます。   一晩で何本も上がるわけでもないようですが、釣人達はあのスズキの豪快な引きと、淡泊な白身の食味に魅せられて通い続けるのです。

ソンクラーン(タイ正月)が終わる頃は、果物の王様ドリアンが出盛ります。 タイ東海岸沿いのラヨーン、クレン、チャンタブリー県はそれぞれ良い漁港を持ち、漁獲高の多いところですが、ドリアンの名産地としても有名な所です。 この時期東海岸道路を車で走ると、火炎樹の赤とゴールデンシャワーの黄色が次々と目を奪いますが、どこからともなくドリアンの香りも漂い流れてきます。

朝五時の市場。 客の数は少ないですが、これから商売を始める人々が忙しげに店の準備をしています。 どこの市場でも魚屋の段取りは早く、五時(まだ暗い)には「さあ、どうぞ」と用意が整っています。   「オッ5kgはあるな」。 相棒と二人の仕入れ、「やっとヤイヤイが出て来たね」。  大きくなると生臭くなりがちなスズキもここラヨーン産のものは臭くないので刺身、スシ種に向く白身魚として重宝します。 「でも、お前さんの田舎のスズキの方が私ゃあ好きだがね」。 相棒が当然とでも云うようにニンマリとうなづく。

ペッブリー、スコータイ以前はクメールが支配していた町。 町を横断する川は町中を過ぎるとかなりの川幅となり、2本の大きな支流が合流するところの川幅は200m以上となり、さらに川幅を広げながらシャム湾へと注いでいます。  川の両側はほぼ自然のままを保っているので、ビックリするほど大きなトカゲが悠然と泳いでいる姿に出くわします。  その丸太のような大トカゲを気にもせずに手漕ぎ、一人乗りの漁師が竹を削って糸をつけただけの釣り道具でスズキを釣っています。   生き海老の尻掛けフカセ釣りで川筋を丹念に釣り上がって行きます。  ここで釣れるスズキは”黄金のスズキ”と呼ばれ、この地区以外へ出ることはありません。 私も何度かお目に掛かりましたが、魚の体全部が金色に輝く、正に黄金のスズキでした。

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
第三回
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
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更新日:2001年12月15日