タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第三回 鰹 (プラー・オーカオ/オーライ)

四月。 ソンクラーン(タイ正月)。 年に三度ある正月の最後の正月。 新年、中国正月にも漁師は船を止めますが、10日ほど漁をしない港もあり、魚が港から消えてしまうソンクラーンは、魚屋にとっては最悪な時期です。 ちょうど気候の変わり目でもあり、海の状況も風・潮ともに漁に適しませんが、この頃からタイにも鰹が登場します。 乾季の間は1Kg程度だった鰹がこの時期になると2Kg~2.5Kgに成長し、立派な若衆になります。

五月。 日本に爽やかな季節が来ると、イナセなハッピを着た鰹たちが早足でやってきます。   「江戸っ子は母(かかあ)を質に置いても 初ガツオ を食べた」と言われていますが、その鰹たちは南からの暖かい潮に乗り、夏の前触れを勢い良く振りまいてさらに北へ向かって通り過ぎていきます。

シャム湾の鰹は日本の本ガツオの兄弟分で「スマ」といいます。 水深の関係か水温の問題か、シャム湾には本ガツオはいません。 一足先にお目見えした鮪兄イの後を追うように群れをなしているので、これに当たると漁船いっぱいに鰹がとれますが、なぜかタイ人は鰹を食べないので缶詰工場行きとなります。   市場性が悪く、その結果価格が安い鰹の鮮度保持・取り扱いには漁師も真剣さが足りず、この為タイではピカピカのイキの良い鰹が少ないのが残念です。

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
第三回
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
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更新日:2001年2月27日