タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第十二回 アオリイカ (プラームック・ホーム)

道4号線。 プラチュアップキリカンを過ぎ30Km走り、小さな町中の道を海岸へ向かう。 町外れに南行きの国鉄の踏切があり、かまわず直進。 水田地帯を過ぎるといきなり一直線の海岸へ出る。 ただただ一直線の海岸が南北に見える限り続いている。 不思議な光景だ。 海岸道路を道なりに北上すると桟橋が四本出ている。 船は見当たらない。 桟橋の突付きにイカ屋が並んでいる。

実際にはイカ屋か何か、中に入らないと分からない。 声もかけずにズカズカと入ってみると店番のバアさん(実はオーナー)が小さな机の後ろに座っていた。
「イカある?」
「そん中に入っているよ!」
指されたタンクの蓋を外してみると、満タンにイカがある。 しかもそのサイズときたら“ ジャンボ、ジャンボ ”。 いやー、驚いたね!
「いつもこんなに大きいの?」
「今は時期だから、そんなもんだよ!」
「なんぼ?」
「.........」
なんと値段も安い。 アオリイカ・モンゴウイカばかり。 一番デカイのを量ってみると、2.7kg。 今まで見た中で一番大きい。
「どこへ売ってるの?」
「プラチュアップとマハーチャイから取りに来るよ」
「売ってくれる?」
「そのタンクに100Kgあるよ!」そんなにいらないんだよねー。
このバアさん、キツイね。

イカはカゴ漁だそうで、たくさんのカゴ(トラップ)を海へ沈めて頃合いに上げるとイカが入っている、とのこと。
何とものんびりした漁だが、あれだけ獲れれば言うことはない。 ジャンボをいっぱい買って次の漁村へ向かう。

国道四号線を更に南下。 チュンポン手前40Km程の小さな漁村に着く。 20件程の集落。 村外れに一際立派な網元がそびえたっている。 何か日本と似ているね。
家の前でオシャベリ中の娘? オバサンに声をかけ、イカを見せてもらう。
やっぺりジャンボだ。 値段も行き先も一緒。
プラチュアップキリカンからチュンポンの間の漁村はほとんどイカ漁、マハーチャイ出荷であった。

タイのイカは寿司種、刺身用として大量に日本へ輸出され、外貨を稼いでいる。 在タイ日本料理店も例外なくアオリイカを使っている。 理由は美味しいから。 まことに単純。

専門家も一様に「タイのアオリイカは最高」と言っています。
ご家庭でも、お刺身でどうぞ。

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
鮪(まぐろ)
第三回
鰹(かつお)
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
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更新日:2001年2月27日