タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第十三回 シイラ

リンブルーがかった黄(金)色の体全体にブルーの星を付け、大洋の水面近くを馬力にまかせて泳ぎ回る。 釣り糸にかかると徹底的にファイトし、万力の異名を持つほど力の強い魚。 これがシイラです。 大きな物は二メートル程にもなり、長さの割には太くなく、扁平といえる体型をしています。 生きている時は大変美しい色をしていますが、死ぬとすぐに青黒い色に変わってしまいます。 世界中の暖かい海を住みかとしているのはカジキと似ていますが、実はまぐろかつお旗魚かじきと同様、サバの仲間とは思いもよりませんでした。

◊ ◊ ◊ ◊

力の強い割には身は“白身で淡泊”、魚臭さも少ないため、魚嫌いの米国でもバター焼き・ムニエルなどの料理で一般的に食べているようです。

◊ ◊ ◊ ◊

ソンクラーン、季節の変わり目、潮が変わるのか? この頃から市場にシイラが並ぶようになります。 船頭衆が雑魚扱いで“ブーン”と放り投げた一メートル程のシイラを市場のオバサンは「トムヤムにすると美味しいよ」とかなんとかウマイこと言って売り付けようとしますが、実は彼女たちも好んで食べるわけではないようです。

某日、一メートルちょっとの活きのいいのが目に付いたので一本仕入れてみましたが、結果は散々。
頼みの綱、沖縄出身の板前さんに見てもらうと、「オッ、こいつは良い!」と二つ返事で買ってくれました。   やはり暖海の住人同士、相性がよいようです。   後日伺うと、刺身から始まり、揚げ物と煮物を除くほとんどの料理が出きるそうです。   良かった。   良かった。

午後三時。 一本釣りの小船が帰ってきます。 まだ子供のような漁師から真っ黒に焼けたシワ顔(ヅラ)まで、『老人と海』に登場する主役のような漁師達が、それぞれの漁場(ポイント)から、おのおのが得意とする釣りで獲った魚を水揚げし始めます。

白ギス・イトヨリ・アジなどの小物、タチウオ・鯛・シマアジなどの中型魚。 顔がシワクチャで真っ黒に焼けた老船頭は、やはり大物を揚げてきました。 商品としては中型魚が値が張るため、中年の船頭が頑張ります。 大物は漁師のプライドが第一で、収入は二の次の感があります。
どうです、貴兄もヘミングウエイの世界で釣りをしてみては?

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
鮪(まぐろ)
第三回
鰹(かつお)
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
web No223


戻る

更新日:2001年3月27日