岡野雅海
イサキは日本では夏が盛期の魚、刺身・塩焼き・酒蒸し・ショウガ煮と淡泊な身を生かす料理があります。
黄味がかったピンク地、タイに似た体型、口元は黄色く頭から尾にかけて鮮やかな黄色の縦ジマ、身はビシッと締まり、姿盛りにすると最高、これがタイのイサキ、“ 赤シマイサキ ” です。
岩礁地帯に生息している魚特有の鋭い前歯が二本生え、いかにも敏捷そうな小気味の良い魚です。 型は大きくても、1kg程度、これ以上のものにはまだお目にかかっていません。
4月頃から一本釣りで揚がり始めますが、釣れる漁が極端に少ない為、バンコクでは見ることが出来ません。 しかし、日本のイサキより身が締まり、姿作りにすると堂々とした一品になります。
ラヨーン午後市、狭い路地の両側に出店がズラッとならび両側から売り声が掛かります。
「おじさん、鰆の卵どう......?」。
一度買った店からは必ず一声きます。
「今日は一人かね?」。
なじみのバアさんから、「これなんかどうかね?」。
手元を見ると赤シマイサキ。
「ナンボ?」
この「ナンボ」の調子が大切で、物欲しそうに意気込んだら値段が高くなる。
ラヨンは中華系タイ人の町、スキを見せると必ずツケ込んできます。
「Χ Χ B」何と安い。 がマダマダ
「何ちゅう魚?」
「あんた知らんかね?」
何気なく、「俺が知るわけないよー、 刺身で食えるかね?
「私が知るわけない、タイ人だもの」。
どうして、仲々やるわ。
結局、“ 誰も知らない魚を売っている ” と言うことで値引き成立。
二ヶ月ほど前、このバアさん黒鯛を売っていた。 やはり、名前を知らなかった。 バアさんの質問に何気なく答えてしまい、後で我良きパートナーにえらく叱られてしまった。 曰く、名前を知らないから値段が安いのに、わざわざ教えて高くするなんて、“ バカのすることだ ” “ ましてタイ語でなんて ” と、もう、ボロクソ。 この貴い教えを活かした結果が前記のヤリトリ。
皆さん、むやみに物を教えると“ (T_T)ヒドイ目に ” あいます。
この赤シマイサキ、色とりどりの魚の中でもひときわ目立つタテジマが目安。 これを姿作りにして持ち帰った日本人の奥様は“大変に美味しかった ”そうです。
ご注文いただいても、持って来るチャンスの少ないのが残念ですが、ラヨンへ行く機会がありましたら、午後市のバアさんと楽しい “ ヤットソ ” で赤シマイサキを買って帰りましょう。
何.......タイ語がアウト?
それは残念
チエンマイ「寿司一番」
●著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)●
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
| 第一回 シャム湾 | 第二回 鮪(まぐろ) | 第三回 鰹(かつお) | 第四回 ハモ |
| 第五回 スズキ | 第六回 タチウオ | 第七回 タカベ | 第八回 イサキ |
| 第九回 岩ガキ | 第十回 カマス | 第十一回 イワシ | 第十二回 アオリイカ |
| 第十三回 シイラ | 第十四回 ボラ | 第十五回 熊エビ | 第十六回 鯛 |
| 第十七回 鰆(サワラ) | 第十八回 鯖(サバ) | 第十九回 魚屋の生活 | 第二十回 ソコイトヨリ ・ 鬼サザエ |