タイ国さかな歳時記

岡野雅海

第十回 カマス

いつ、いま一つうまみにかけるなー。
「淡泊!!」
「いやあ、好評好評。 明日カマス入れて」
「どういうこった??」
同じ魚を入れてもお店によって評価が異なります。 当然、調理の仕方・板前の腕・客層。 様々な要素が絡み合って出る総評価です。

カマス。 日本では干物として高級な部類に入りますが、和歌山方面では姿ずしにする、ともあり、一度ぜひ食べてみたいものです。

カマスは温帯から熱帯にかけて広く分布する魚で種類も多く、大型のものはバラクーダと言われ“人食い魚”と恐れられています。   かなりの数で群をなし、イカ・小魚に襲いかかり、鋭い歯で食い荒らします。 海の穏やかな日、海面をゆったりと泳ぐ姿はそれほど狂暴な感じはしませんが、エサを食いにかかると狂ったようになるところはサメと似ています。

「はい、注文の品」
「何、これ? デカイネー」
「カマスLL」
「どうするの、コレ?」
「.......」
しらばっくれて変なの持ってきて、様子を見るのも楽しみの一つ。
「何、コレ??」
「オニカマス」
しらばっくれて持ってきた時の返事は短い方が良い。
「それで、置いてくつもり? 持って帰れ!」
「要りません!」
「そう.....」
オニカマス。2m程に成長する。 今回持ってきたのは4Kg、80cm程の小型。 細長い体型の、魚特有の身のしまった肉、白身。
「好評、好評。 ユウアン漬けにしたら美味くいった。 明日また......」と、何とか結果が出る。 借りて見るもんだ、他人のフンドシ。
「こりゃまた小さいね。」
「この前のはデカかったので、今日のはS.S.」
「どうする、これ?」
「しょうがない、置いてって!」
「毎度ありー.......」
「好評、好評。塩焼きでうまい!」
「明日、また入れますか?」
「あったらね」
運悪く、魚が揚がってこなかった。 残念。

カマスの小型は身が柔らかく水っぽいので、塩焼き・干物で食べる。 夏の高級魚ですが、料理法が少ない欠点があります。
干物は
酒干し(酒と塩に漬け、天日干し半日)
生干し(塩水に漬け、天日干し半日)

.....で、簡単に出来ます。
他に、魚田。 同量の味噌・酒・砂糖に昆布のだしを鍋に入れ、火にかけて練り合わせ、背開きにしたカマスを焼き上げ、練り味噌を塗り、あぶり焼きにする。

他に何か調理方法があったら教えて。 いつでもフンドシ借りに行くよ。

著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。


第一回
シャム湾
第二回
鮪(まぐろ)
第三回
鰹(かつお)
第四回
ハモ
第五回
スズキ
第六回
タチウオ
第七回
タカベ
第八回
イサキ
第九回
岩ガキ
第十回
カマス
第十一回
イワシ
第十二回
アオリイカ
第十三回
シイラ
第十四回
ボラ
第十五回
熊エビ
第十六回
第十七回
鰆(サワラ)
第十八回
鯖(サバ)
第十九回
魚屋の生活
第二十回
ソコイトヨリ
鬼サザエ
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更新日:2001年3月27日