岡野雅海
シャム湾、そしてアンダマン海。 二つの海を持つタイ国は水産物の大輸出国です。 実際、ここで水揚げされた魚介類が日本のスーパー、そしてもちろん当地でも大量に売られています。 当地で店頭に並ぶのは、チリメンジャコ・スルメ・ブラックタイガーエビなど日本の食卓のレギュラー選手から、マリンブルーの熱帯の海を連想させる、色も鮮やかな魚まで実に様々。
しかしそんなバラエティに富んだタイ産の魚介類も、その実体となると日本人の間ではほとんど知られてないのが実状ではないでしょうか?
彼らはどんな海に住み、どんな生態を持っているのでしょうか?
また、同じような種類でも日本の海で獲れるものとはどんな違いがあるのでしょうか?
そして、美味しい食べ方とは?
ユニークなタイの魚たちの素顔に迫る新連載です。
これからとりあげる魚介類が生息するシャム湾の特徴について、まずは、お話ししていきましょう。
シャム湾とは、マレー半島突端からフィリピン諸島にはさまれた一帯を指します。 海流は赤道直下から始まり、マレー半島沿いに時計回りに北上、タイ海岸沿いにカンボジア・ベトナムへと流れています。 一方、一部はカンボジアで分流をおこしてサムイ島(スラーターニー)へと南下、赤道から北上海流へぶつかります。
シャム湾の海底は砂が主で凹凸が少なく、平均水深が50mという、世界でも珍しい浅い海を形成しています。 また、熱帯の強烈な日差しが海面を温め、平均水温28℃~30℃という暖かい海を作り出しています。 雨期には大量の真水が細かいラテライトとともにシャム湾に流入し、海を沖へ押し流します。 この為、沿岸では雨季と乾季の海水の塩分濃度に違いが生じ、海流の流れとあいまって水揚げされる魚介類にも季節による変化が生じます。
この様な海に住む生物は、暖かいきれいな海に生息する珊瑚類と珊瑚海に生息する貝類・魚類、そして砂底を好む貝類・魚類と多種多様で、海草が繁茂する日本の冷たい海とはまた異なった様相を呈しています。 まぐろ・かつお・ハタ・タイ・アジ・サザエ・トコブシ・ハマグリ・アサリ……と、我々日本人にもなじみの深いものもたくさんあります。
が、
実際に海で獲れるものは「ン…!? ちょっと違う??」 暖海の住人です。
気候、風土により人種が異なるのと同じように、名前は同じでも「ちょっと顔つきが違う」魚介たちが生息しています。
顔が違えば味も違う…というのもまた真なり、
ですが、
新鮮であれば刺身が美味しいことは日本と変わりません。
次回からはいよいよ主人公たちの登場です。
★著者 : 岡野 雅海 (おかの まさみ)★
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
| 第一回 シャム湾 |
第二回 鮪 |
第三回 鰹 |
第四回 ハモ |
| 第五回 スズキ |
第六回 タチウオ |
第七回 タカベ |
第八回 イサキ |
| 第九回 岩ガキ |
第十回 カマス |
第十一回 イワシ |
第十二回 アオリイカ |
| 第十三回 シイラ |
第十四回 ボラ |
第十五回 熊エビ |
第十六回 鯛 |
| 第十七回 鰆(サワラ) |
第十八回 鯖(サバ) |
第十九回 魚屋の生活 |
第二十回 ソコイトヨリ 鬼サザエ ![]() |