「これさあ、もうちょっとこう幅広で肉厚なのないかなあ」
「タイの舌平目はスマートなのよね」
「チョッと感じが違うんだなー」
客先との会話。
相手は日本でしか知らず、私はタイ産しか知らない。現物を目の前にアアだコウだ、の話が続き、結局仕事無しでチョン。 舌平目に限らず他の多くの魚も似たり寄ったりの会話となる。 ここはタイ、魚はメイドイン・タイランド。 違って当たり前、でも日本の板前さんはコダワルのよねえ。
「岡野さん、舌平目ありますか?」
イタリア料理店のオーナージェフ。
「イタリア料理でも使うんですか?」
「使いますよ。 明後日8人の予約が入っているので、大きいの8枚お願いします」
この注文、海がシケて納入できず.............残念。
舌ビラメ。 日本名:牛の舌。 タイ名:プラー・リンマー(犬の舌)。
両国とも似たようなのがいます。 赤い色の赤舌平目。黒い色の黒牛の舌。 横じまのささ牛の舌。 ツルマキ、セト牛の舌。 私の見た限りでは以上です。
主に料理に使われるのは、赤舌ビラメと黒牛の舌の二種類の様で、コダワル料理人は(前述の人ですが)「黒、持ってこい」なんて言うが、赤持って行っても苦情が出ないのが不思議。
浅海の砂地に生息。 体を砂の中に埋めて上目使いに餌の来るのを待つ。 捕食圏内に入ると、ヒラッという感じで横向きの口を開けて餌を食う。平べったい体に似合わぬ素早さです。 浅く砂地の多いシャム湾は最適の生息地。
さぞかし多くの舌ビラメがいることでしょう。
表裏とも小出刃でウロコを落とし、腸を出す。 きれいに水洗いして、水気を切る。
「フランス料理のムニエルに似ていますが」
「バターを使うので、そっちから入ったのでしょう。 仕上げにワインを入れるとムニエルになる」
「小麦粉とカレー粉を半々程度にあわせた粉を付け、カレー揚げにしても美味しい」
「何か大変お手軽な感じがしますが」
「そうでもない。バター焼きは表こんがり裏から火を通すが難しいし、空揚げは揚げすぎて焦がさないようにするのが難しい」
「簡単そうなだけで本当は難しい」
「そういうこと。 じゃ、また」
●岡野 雅海 (おかの まさみ)●
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
※取材協力・・・・日本料理店「みまた」 三俣哲士 氏
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