本州中部以南から紅海迄の広範囲に分布。 内湾の砂泥地に生息する底着性の魚。 形は普通の魚と異なり、頭の部分を上から押し潰したような形で、頭が三角形で大きく、尾に向かって“ホッソリ”としている。
シャム湾にも多く生息しているに違いないが、タイ人の好みに合わないらしく、漁師が見向きもしないので、鮮度の良い刺身向けを入手するのは難しい。 この状態は、魚屋としては喜ばしいのだが注文されても“アイヨッ”と言うわけにもいかず、しばしば客先からの苦情をいただくことになる。
この“ゴチ”、珍しく夏場が旬という魚だが、タイランドでは通年“ポツリポツリ”と市場に登場する。
「ゴチ釣りに行きたいね」
釣り好きの客の要望もあるが、何せ漁師に不人気な魚なので、エサ・ポイント共に分からず船を出せずにいる。 日本で“真ゴチ釣り”と言えば、完全にベテラン向きの釣りで、ビギナーが“チョット、ゴチ釣り”とはいかない。
針に掛けるまでの呼吸が大変に難しく、ボウズもしばしばとか。
しかし、釣れれば“大変美味しい”魚なので、好者は止められない釣りでもある。
「先生、今回は真ゴチですが。」
「いいねえ。 型も良いし1Kgくらいかな?」
「1.2Kg、元気も良いです。」
「このくらいだとやる気になるね!」
「下処理からお願いします。」
「きれいな刺身が出来ましたが。」
「うん、タイの魚の中では黒鯛と並んでかなり“イケル”魚だね。」
「刺身以外ではどんな料理が?」
「スッポン煮、かな」
「それを教えてください。」
「時間はかかりますが、割合簡単ですね。」
「そう、根気よく煮つめるのがコツ。 鍋の側を離れないこと。」
「煮物に共通ですね。」
「その通り。」
「ありがとうございました。」
「じゃ、また。」
ゴチ。 見かけの悪い魚は美味しい、の例え通り上品な味覚。
「女も見かけが良くないと気立てが良いよ。」
誰だい、余計な事いうのは!
●岡野 雅海 (おかの まさみ)●
海と水の専門家としてバンセンの水族館建設に関わる。 海、魚好きが高じ、現在は在タイ日本料理店向けの魚を専門に扱う卸業に従事。 そのかたわら、海と魚の研究を続ける。
※取材協力・・・・日本料理店「みまた」 三俣哲士 氏
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